光り輝く楠が野火に焼かれて琵琶湖上へ 〜 獄山の霊木 〜
アイリッシュパーク辺りから西方向を眺めると、多くの人たちが子供の頃に遊んだであろう白坂が目に飛び込んできます。 この白坂がある山が獄山(だけさん)で、その里の音羽の集落には近江西国七番札所の百連山長谷寺があります。 御本尊は秘仏の十一面観音立像で、両脇には龍王立像・雨宝童子がおられます。
この獄山には興味深い話が伝わっています。
奈良時代、獄山(三尾山)には約三十メートルの楠(くすのき)があり、常に光を放ち白蓮華(白い蓮の花)のようでした。 ある時、野火のため楠は焼かれ、根も激浪に洗われて琵琶湖上に流れ出し、長い間大津浦に漂っていました。
養老四年(七二○年)、大和国高市郡八木の里に移したところ、泊瀬山(はせやま)に住んでいた徳道上人(とくどうしょうにん)が、この楠の霊木を使って十一面観音菩薩像を造立しようと発願し神亀四年(七二七年)に成し遂げました。 これが大和国泊瀬寺の本尊です。 この霊木からは、讃岐国志度寺(しどじ)の御本尊も造られました。
また、この霊木の根本の部分からは近江国長谷寺の御本尊が作られたと伝えられ、今も各寺に本木伝承が脈々と伝わっています。
(2022.7)
注:近江国長谷寺信仰は、獄山の千日詣でとして毎年7月9日に行われています。